交通事故 胸郭出口症候群の事例

交通事故 胸郭出口症候群の事例

 私は現在胸郭出口症候群が問題になっている事例を担当している。この事例では損保側からは、そもそも外傷では胸郭出口症候群にはならないという立場の意見書が提出されている。
 ちょっと、長いが、胸郭出口症候群に関する部分だけ紹介する。この書面ではさらに長く展開される。


4.  胸郭出口症候群の診断
1. 胸郭出口症候群の診断
1) 診断基準
  胸郭出口症候群は外傷を転機として、頚部から上肢の疼痛、だるさ、しびれ感を訴える疾患である。上肢以外には頭痛、嘔気、めまい、全身倦怠感など自律神経失調症状もある(甲28、甲30、甲35)。上記のように本件では交通事故を転機として、頭痛、左上肢痛、しびれ、冷感、脱力、めまいなどの症状が発症しており、今日まで継続している。
  こうした、外傷後の上肢の症状について、甲28は鑑別のための診断基準として、次の3つを示している(甲28294頁左、表1、甲29、159頁)。
 ① 肩から上肢にかけての神経・血管圧迫症状が存在し、長期間持続するかあるいは反復性である。
 ② Timed Morley test 、Wright test、Roos testのうち少なくとも1つが陽性でその際に愁訴の誘発または増悪が認められる。
 ③ 頸椎疾患が除外できる。
  甲35、285頁には上記②のテストが説明されている。
  モーレーテスト(Timed Morley test)とは、鎖骨上窩で腕神経叢を指で圧迫することにより圧痛,前胸部への放散痛が生させるテストである。
  ライトテスト(Wright test)は座位で両肩関節を外転90°,外旋90°,肘90°屈曲位をとらせ、榛骨動脈の脈拍が減弱を誘発するテストである。
  ルーステスト(Roos test)はライト・テストの姿勢(両ひじを90度曲げ、腕を90度外側に3分間あげる)で両手指の屈伸を3分間行わせるものである。手指のしびれ,前腕のだるさのため持続ができず,途中で上肢を降ろしてしまう。これは肋鎖間隙で腕神経叢が圧迫されることによる。また、上肢が蒼白になったり、チアノーゼ様になる。
2) 血管造影検査、サーモグラフィ検査
  血管造影検査結果、サーモグラフィ検査なども有力な判断材料となる。
  血管造影検査は胸郭出口症候群の検査としては補助検査とされている(甲35、281頁)。それは、胸郭出口症候群は「血管性病変はまれであり、ほとんと神経性であるため必要な検査ではない」という理由である。胸郭出口症候群の検査ではライトテストなど前記②のテストが行われるが、その目的とするところは胸郭出口部の圧迫を誘発することにより、実際に鎖骨下静脈、腕神経叢部分の圧迫が認められるかどうかが主要なテーマである。従って、座位で両肩関節を外転90°,外旋90°,肘90°屈曲位をとらせるなどした場合に、血管造影検査によって血流の減少あるいは途絶が生じれば鎖骨下動脈部に強い圧迫があることになり、それに併走して存在する腕神経叢部分も圧迫されていると考えられる。紛争処理機構の意見書には血管造影検査を補助診断だという理由だけで考慮の枠外に置いているが誤りである。

 

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