交通事故 胸郭出口の解剖
交通事故 胸郭出口の解剖
交通事故分野で非常に難しい事件の1つに胸郭出口症候群の事例がある。これは、それだと決める決定的な検査方法がないことや、事故によってこの症例が生じることを否定する医師もいることが問題を難しくしている。
しかし、胸郭出口症候群だとして手術したことによって症状が改善した事例があるのだから、そもそも胸郭出口症候群を否定する考え方はあり得ない。私の経験した事例でもいくつか手術によって証明された交通事故事例が存在する。
ともかく、この症例についての基礎的な知識を整理しておきたい。
胸郭出口というのは鎖骨下付近にある。第一肋骨、鎖骨、斜角筋で形成される部分を胸郭出口といっている。下の図にあるように斜角筋は肋骨を引き上げたり、首を曲げたりするときに使う筋肉です。この筋肉は第一肋骨につながっています。
斜角筋のうち前斜角筋と中斜角筋、第一肋骨の3つに囲まれた部分が「斜角筋三角」と呼ばれている箇所ということになります。この斜角筋三角と呼ばれる部分に腕神経叢と鎖骨下動脈が通っています。胸郭出口症候群というのはこの、斜角筋と斜角筋の間が狭くなり、神経や血管が圧迫され、傷害されることによって生じる疾患をさします。