交通事故 脳脊髄液減少症の発症が認められた事例

交通事故 脳脊髄液減少症の発症が認められた事例

 名古屋高裁脳脊髄液減少症を理由にした賠償を認めた(H23.3.18、判時2121号65頁)。脳脊髄液減少症は交通事故により髄液漏出が起こり、頭痛などの障害をもたらす疾病だ。

 脳脊髄液減少症低髄液圧症候群という病名もあったが、現在では突発性頭蓋内圧症候群(SHI)という病名が一般的に使用されている。脳脊髄液減少症は診断や治療方法については必ずしも確立した状況にあるとは言えないため、損保側もかなり真剣に争ってくる。私が過去に一度、脳脊髄液減少症を主張したところ、被告側は待ってましたといわんばかりに大量の医学論文を提出してきたことがある。

 このようにあいまいさから各地で低髄液圧症候群に関する争いは敗れたりしている。この点、名古屋高裁は日本神経外傷学会の頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会が発表した診断基準に従って本件を判断した。ちょっと長いがためになると思うので引用する。

「未だ医学界全体において十分なコンセンサスが得られていない状況にあるにしても、むしろ現時点においては、外傷によって脳脊髄液減少症が発症すること自体は認められつつあり、厚生労働省も平成22年4月12日に脳脊髄液減少症についての各種検査は保険適用になる旨の見解を示し、同症の診断基準を作成するための研究を継続する旨を明らかにしている。」

「控訴人の症状は、日本神経外傷学会の前記診断基準に当てはめてみても、起立性の強い頭痛が本件事故直後から発生しているのであるから、」いくつかの基準に該当するため、本件を脳脊髄液減少症と判断した。

 興味深いのは画像診断に対する判断だが、「本件に関与した中で篠永医師のみが髄液流出の画像所見を肯定している点も、単に専門医である篠永医師以外の医師らにはその判定が困難であった可能性が高く、控訴人を直接診療した篠永医師の画像所見を疑うべき特段の事情はうかがわれない。」として、直接診療した医師の判断を尊重している点だ。

 本件は平成15年10月11日の事故であり、判決は平成23年であった。実に8年を経ているのだが、判決では被害者の低髄液圧症候群は一応完治したことになっている。しかし、14級を遙かに超えた重い障害があったとして、長期の休業補償を認定した上で、働いた期間についても40%の労働能力喪失を認めた。

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