「家族の慰謝料、友達の慰謝料」
「家族の慰謝料、友達の慰謝料」
交通事故遺族の慰謝料が広く認められた判決が出ましたので紹介したいと思います(宇都宮地裁H23.3.30判時2115号83頁)。
この事件は平成20年1月30日、午後5時35分ころ発生した交通事故です。事故現場は片側2.8mの1車線の道路でした。冬の日の午後5時30分くらいでしたから、あたりは暗くなっていただろうと思います。
この現場を女子中学生3名が自転車に乗っていました。自動車が来たというので、3名は自転車を止め、2人は自転車おり、1人は自転車に乗ったまま自動車が通り過ぎるのを待っていました。子供たちは白ヘルメット、反射材たすきなどをつけていました。
そこを、時速60kmで通過した加害者が、通過した際に女の子一人をはね飛ばし、脳挫傷によって死亡させてしまいました。この事件は明らかな過失がありますから女の子の賠償責任は認められます。
さらに、両親の外、中学生の祖父母、姉妹の固有の慰謝料を認めたほか、歩いていた友人2名にも30万円の慰謝料が認められたという点で、めずらしい判決となりました。
民法711条によれば、死亡した被害者の父母、配偶者及び子については固有の慰謝料というのが認められます。つまり、被害者本人も被害を受けたが、残された家族も深い悲しみによる精神的苦痛を負うと認められています(最3S49.12.17)。
判例によれば、父母などだけでなく、祖父母、兄弟姉妹などについても民法711条を類推適用して固有の慰謝料が認められています。本件では、本人の慰謝料2300万円、両親にそれぞれ250万円(合計500万円)、祖父母、兄弟姉妹にそれぞれ120万円(合計600万円)が認められました。
さらに、いっしょに通行していた2人の友達にもそれぞれ30万円の慰謝料が認められました。この慰謝料は固有の慰謝料ですが、友人を失った悲しみ及び自らも死の恐怖にさらされたことに対する慰謝料として認められました。
なお、損保側は、道路端からやや離れた場所に立っていたことに過失相殺を認めるべきと言う主張をしましたが、判決では被害者らに「何の落ち度もない」として取り上げられませんでした。