交通事故 死亡事故の難しさ
交通事故 死亡事故の難しさ
死亡事故の場合,損額そのものはそれほど難しくありません。しかし,死亡事故の難しいところは亡くなった方が何も語らないところにあります。事故そのものが加害者の一方的な言い分で組み立てられてしまって,遺族としてはとても悔しい思いをします。私が経験した事例でも,加害者によると,被害者が赤信号で飛び出してきたと自分の正当性を主張しました。
この時には,事故現場を丹念に調べ上げ,とても飛び出せるような場所ではないことを明らかにしていきました。反対尋問では現場とつきあわせて加害者の証言の矛盾を追及し,徐々に事案の真相が分かってきました。加害者は雨なのにワイパーを付けていなかったこと,信号の変わり目であったこと,走行中に被害者の傘が見えていたことなどが反対尋問で分かってきたのです。
死亡事故の場合,私たちが特に気をつかうのは,何のために裁判を進めているのかという点です。つまり,死亡事故という亡くなった方に対する弔いのようなところがあります。事故という不幸を受け入れる過程が裁判だったりすることがあるのです。このことは重傷事故でも同じです。亡くなってこそいませんが,理不尽な事故に対してそれを受け入れる過程としての裁判ということもあります。