高次脳機能障害では全ての脳機能が害された訳ではない
高次脳機能障害では全ての脳機能が害された訳ではない
(ある交通事故被害者事件,裁判ではこういう主張をしています。)
「『高次脳機能障害』という用語は、学術用語としては、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。」(厚生労働省「高次脳機能障害者支援の手引き」)。
人が脳の障害を受けた場合,損傷部位によって正常部分と非正常部分が存在する,高次脳機能障害の多くは脳機能が部分的に障害を受けた結果,感覚や記憶など,脳の一時的な機能を相互に結びつけてより高次の判断ができなくなる疾患である。注意を要するのはある局面では正常に日常生活ができたとしても別の局面では障害が現れてくる。
本件では被告は高い研究能力と経験を有するものの記憶障害や遂行機能障害などによってそれを失った。原告は本件訴訟において多くの調査能力を発揮していることや,分析力を示している。しかし,これは原告の能力の断面でしかない。このこをともって原告の高次脳機能障害を否定することは高次脳機能障害が正常部分と非正常部分と混在していることを見落とすことになる。
本件では原告は「ガチボーイ」という映画を証拠として提出している(甲161の2)。このような証拠を提出した動機について原告は次の様に証言する(調書26頁)。
「記憶が止まらないので,必死に記憶を止めようとする姿と,あと外形は普通の人でも,中が壊れている人がいるということを知ってほしかったです。」